高仲 健一 絵ッセイ集原画展"山是山水是水"
2015年2月27日(金)-3月8日(日)
長男が保育園児を終わろうとする最後の春休み、毎日長男と山に犬の散歩に入りました。小学生になったら、こう毎日は一緒に山へ入れまい、と思い、私はちょっと、しみじみした心持ちでした。
そんなある日、私と長男で、急な崖を削ってわずかな道とした所を歩いていると、正面から我が家の
犬達に追いかけられた丸々太った若い鹿が私達に突っ込んできました。私はとっさに長男の手を握って
谷へ飛び下りました。崖を少し転がって、止まったところで長男の顔を見ると、初めはびっくりしていた
その顔が笑顔へと変わり、いやー、びっくりしたなあ、と言い合って、二人で大笑いしました。
乞い得たり、田園自在の身。ありがたいことに、山の中でのびのびと暮らせる身分を得た。金から元に
かけての元好問の初挈家還讀書山雜詩の一節です。
高仲健一 絵ッセイ集「山是山水是水」自然堂出版より抜粋
高仲健一
画家・書家・陶芸家。1966年茨城県取手市出身。
学習院大学中退。
19歳で油彩画において二紀展入選。会社勤務を経て、1993年千葉県大多喜町山中に登り窯を自作して移住、爾来創作活動に専念。
周囲の豊かで厳しい自然環境を、余すところ無く画題として吸収・消化しながら創作を行う。日本人である自分が創作・表現を成すには、自らの人文的出自を掘り下げることが必定と考え、漢籍・水墨画・陶磁器から家具骨董に至るまで東洋の古典を徹底的に勉強・吸収、独自の感性を深めて行く。 内外の著名ギャラリー・百貨店画廊等で個展多数開催。その独自の世界感、やさしさと滋味あふれる作品に、また、作風からは想像し難い磊落な人柄とその奇跡ともいえる暮らしぶりに、熱心なファンが多い。
最近は、長年培ってきた古典的要素の中から、生来の自分が持つポップな明るい感覚が顕出した作品も発表。
2006年、近隣の湖を望む山上に古式建築の居宅を新築、移住。電線こそひいてはあれど、熱源は薪の火のみという環境を得て、妻と子と、10頭を超える様々な家畜と、無数の野生生物とともに創作に生きる。 完全なる自給自足をすぐ先に見据えながら、想うところを作品に昇華させ続けている。